刃と武が治める森深き帝国。
果てなき戦乱、鋼を握る手、祈りの声の物語。
竜殺しの物語
時は、《野火の王》――古の神の血を引く偉大な王を破り、瞬く間に帝国全土を食らった苛烈な王の、その治世。傭兵たちは武を頼りに、尽きることなき戦場を渡る。
救い手の系譜
血染めの平原に乗り残された少年を救い上げたのは、紅玉の短剣を探して逍遥う傭兵だった。
少年は傭兵に御伽噺の英雄を重ね、故郷を目指す旅が始まった。
望郷
輜重隊で生まれ自らも傭兵となった少年の、六度目の戦。
少年が属する一団は、本隊を離れ、敵軍の横っ腹に風穴を開けるべく、森を進んでいく……。
野良犬の群に問う
戦場で名を挙げるべく村を飛び出した少年は、傭兵隊の募兵所へと足を踏み入れた。
その春の名は憧憬
十一歳の春を伯母の家で過ごすことになった少女ロゼマリーと、何故か伯母の元に転がり込んでぐだぐだしていた鉄の腕の青年。
それぞれのろくでもない事情。
喪われたものの物語
今は御伽噺と呼ばれ、じきに神話と呼ばれるようになる時代の、生と熱情。
夜は深く、雨は強く
夕刻に強まり始めた風は日没と共に雨を呼び、そして夜半には嵐となった。
雨音の間に、モニカは、誰かが戸を叩く音を聞いた。
アルブレヒトとランツェ
父の言うことには無理があると、アルブレヒトは常々思っていた。
男装して兄の代わりに騎士になれ、なんて。
追懐の青
「私、ちゃんと恋人いますよ」
と、ティファナは言った。
アデルハイト・フォン・レーエンの手記
“時折忘れそうになるが、私の名はアデルハイト・フォン・レーエン。
この混乱した状況を少しでも整理するため、記録を取ることにする。”